マンション等の賃貸借契約書では、賃料の支払時期について、翌月分の賃料を毎月末に支払うことになっていますが、民法614条では、「建物については、毎月末に之(賃料)を払うことを要す」と賃料の後払いを規定しています。
そうすると、通常の賃貸借契約書での「賃料前払いの原則」との関係を整理しておかなければなりませんが、民法614条は、慣習を法文化した任意規定にすぎませんので、当事者間において修正することができます。 そして、契約においては、いかにして債務の履行が確保されるかが重要です。
賃貸借契約において、「物を貸す債務」と「賃料の支払い債務」のいずれの債務を先に履行させるのが、債務不履行状態を起こしにくいかを考えてみると、敷金、保証金、連帯保証人と賃料支払い債務には、様々な担保が付けられることからも判るように「債務の支払い債務」の方が「物を貸す債務」と比較して不履行の可能性が圧倒的に高いと考えるのが合理的です。つまり、通常の賃貸借契約書に定められている「賃料前払いの原則」という最近の慣習は合理的なものと考えることができます。
ところで、賃料10万円、賃貸期間2年間という賃貸住宅の契約の場合、賃料総額は240万円となります。賃貸借を建物利用権の売買と考えるならば、賃借人即ち買い主が毎月賃料(売買代金)を支払うのは、代金240万円を分割払いしているものと評価できます。そして、このように売買と評価するなら賃料を一括で前払することが可能であれば、滞納問題が無くなることになります。
さきほどご説明しましたように、民法614条は任意規定といい当事者がこれと異なる内容を合意した場合はその合意が優先的に適用されることになりまので、このような定めも違法ではありません(但し、このような条件で賃借人が納得するかは別問題ですが。)。
賃貸借契約書 | 翌月分の賃料を毎月末に支払う規定 |
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民法614条 | 賃料の後払いを規定 |